妊産婦死亡:都道府県格差5.8倍 搬送整備でも明暗か?医療:MSN毎日インタラクティブ

妊産婦死亡:都道府県格差5.8倍 搬送整備でも明暗か
 厚生労働省の研究班は、妊産婦死亡について分析を進めている。95〜04年の10年間で出生10万人あたり、京都府で10.7人が死亡したのに対し、広島県では1.84人。都道府県によって最大5.8倍の差があった。

 死亡率が低いのは、広島、富山、愛媛、鳥取、岡山など中四国地方に集中する傾向があり、逆に悪かったのは京都、鹿児島、山形、長崎、高知の順だった。背景を探るため、研究班がアンケートしたところ、44都道府県から回答があり、その43%が、周産期医療に携わる医師の減少を挙げた。

 京都府の担当者は「1人あたりの影響が大きい指標。今後、個々の原因を具体的に検証し、対策を考えたい」と回答。鹿児島は「中核を担う病院まで救急車で2時間以上かかる場合があり、離島からはヘリコプターによる搬送で時間を要する。隣県との連携のあり方について検討を進めていく必要がある」と答えた。

 これに対し広島は「普段から産婦人科医の交流があり、搬送受け入れの対応能力を把握できるシステムもある」といい、愛媛は「ハイリスク妊婦が事前に設備の整った周産期センターに搬送される体制が整っている」と答えた。

 格差が生じた理由として、一般に産科医数や病床数、施設数などとの関係が考えられるが、研究班の主任研究者、池田智明・国立循環器病センター周産期科部長は、データに表れない要因も関係しているとみる。池田部長は「死亡率が低い県は、広島のように医師同士の人的ネットワークがしっかりしていて、転送時に生かされたのではないか」と推測する。

 妊産婦死亡をいかに防ぎ、格差を埋めるか。池田部長は「米英と異なり、日本は妊産婦死亡の把握や分析が大幅に遅れている。妊産婦死亡とされない例もあり、率が実際より低い可能性がある」と調査の限界を指摘。一人一人の死から教訓を導き出し、今後に生かす仕組みはまだ整っていない。【根元毅】

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