大淀病院カルテ流出事件

奈良・妊婦死亡:ネット書き込みの開業医を立件見送り

 奈良県大淀町大淀病院で分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、搬送先探しが難航した末に死亡した高崎実香さん(当時32歳)=同県五條市=の診療情報がインターネットに流出した問題で、県警が今春、遺族に対し、掲示板に医療情報を書き込んだ開業医の名誉棄損や秘密漏示などの容疑での立件を見送ると説明していたことが分かった。

 死者の名誉を傷つけたケースでは、虚偽の事実を示した場合でなければ名誉棄損罪で処罰できないためという。遺族側は県警の説明を受けて告訴しないと決めたが、実香さんの義父憲治さん(54)は「納得いかない。現行法の解釈で無理なら、法改正すべきだ」と話している。

 実香さんは06年8月に死亡。遺族や県警によると、近畿地方の開業医が同10月ごろ、実香さんの看護記録や意識を失った時刻、主治医と遺族のやり取りなど詳細な内容をネットの医師専用掲示板に匿名で書き込んだ。

 開業医は弁護士を通じて遺族に謝罪を申し入れ、今月4日、大阪市内で掲示板に診療情報を書き込んだ事実を認め、「大変申し訳ありませんでした。軽率で不謹慎でした」と謝罪したという。

 書き込みを巡っては、同じ掲示板に夫晋輔さん(26)の名誉を傷つける書き込みをした横浜市の別の医師が、奈良簡裁で侮辱罪による科料9000円の略式命令を受けている。

 書き込んだ開業医は実香さんの担当医とは別で、遺族側は今後、開業医の情報源についても調べて対応を検討する。【高瀬浩平】

毎日新聞 2008年7月13日 2時30分

ネット書き込みの医師、遺族に謝罪…奈良・妊婦死亡

 奈良県大淀町大淀病院で2006年、出産時に脳内出血し19病院から受け入れ拒否された末に死亡した高崎実香さん(当時32歳)の個人情報が流出した問題で、遺族側が12日、インターネット掲示板へ最初に情報を書き込んだ人物から謝罪を受けたと明らかにした。

 遺族側の石川寛俊弁護士によると、近畿地方で産科を開業する医師から、今年に入って謝罪の申し入れがあり、今月4日に遺族と石川弁護士が面会。医師は「掲載したのは軽率だった」と謝罪、情報の入手先は明らかにしなかったという。

 この医師は、医師専用の掲示板に「カルテのコピーを見ながらまとめた」として出産や搬送の経過を詳しく記載していた。

 高崎さんの夫、晋輔さん(26)は「謝罪が遅いとは思うが、自分がやったと認め、反省してくれたのはよかった」と話している。
(2008年7月13日 読売新聞)

転院断られ死亡の妊婦のカルテ内容流出 開業医が遺族に謝罪
2008.7.13 00:23

 奈良県大淀町の町立大淀病院で平成18年8月、同県の高崎実香さん=当時(32)=が分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、19病院に転院を断られた末に後日死亡した問題で、実香さんのカルテの内容をインターネット上に流出させたという近畿の男性開業医が名乗り出て、義父の高崎憲治さん(54)らに直接謝罪していたことが12日、分かった。

 憲治さんによると、今回の開業医は今月4日、晋輔さんとともに大阪市内で面会。開業医はカルテ内容を同サイトに流出させたことを認めて「軽率で不謹慎でした」と謝罪。「症例を紹介して医学的な検証をし、産科医を守りたかった」と話したが、入手経路は明らかにしなかったという。

 憲治さんは「素性を明かしたことは評価する。中傷は被害者を苦しめるだけでなく、医療界の信頼を下げるということも強く考えてほしい」と話した。