医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会 まとめ

厚生労働省医政局看護課の「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会 まとめ」。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/11/s1124-5.html

3 産科における看護師等の業務

 ○  保助看法において、助産は、医師及び助産師のみに許された業務とされており、現在、産婦に対する内診は助産の業務の一環として取り扱われているところである。
 ○  これに対し、産科を閉鎖したり、分娩の取り扱いを取りやめる医療機関が相次いでいるが、このことは診療所における助産師の不足も大きく影響していると考えられることから、一定の条件下での内診を看護師等が行える診療の補助行為として考えるべきとの提案があった。

 <看護師の業務について>  ○  こうした分娩を取り巻く現状を踏まえ、産科における看護師の業務について、当検討会において、以下のような見直し論、反対論、慎重論があった。

(見直し論)

・  保助看法には助産の定義はなく、助産と診療の補助行為の違いが明確ではない。医学的な判断の下に何らかの基準で助産を定義し、診療の補助行為と区別するべきである。何をもって助産とするかは、医療従事者の意見も踏まえた上で判断がなされるべきである。
・  助産師が行う内診と、医師の指示の下で看護師が行うものとして求めている内診とは自ずから内容が異なる。医師が求めるのは、分娩第1期において、分娩監視装置等により観察しつつ、看護師が子宮口の開大度・児頭の下降度のみを計測し、医師に伝えることである。なお、内診は分娩進行の把握には重要な役割を果たしているが、それだけでは胎児の健康状態を判断できない。
・  現在、看護師は内診をすることができないこととなっているが、少なくとも分娩の第1期において一定の条件下で行うことは、絶え間のない分娩監視につながり、医療安全を高め、違法性はないと考えられる。医療現場では、看護師が患者の状態を観察し、医師に報告し、それを基に医師が判断することは通常であり、それが否定されることは疑問である。
・  外来・分娩・手術も行わなければならない医師は、約8時間に及ぶ分娩第1期の経過を常に観察することは不可能であり、それを補い、分娩を安全に導くために、看護師による子宮口の開大度・児頭の下降度の観察・測定が必要である。内診は静脈注射より侵襲性が少なく、分娩監視装置により監視している場合にあっては、訓練した看護師なら安全に実施できる業務である。
・  現在の保助看法はかつての産婆規則を踏襲しているところもあり、法律の解釈は時代背景を踏まえるべきであるが、現行の法体系においてできないのであれば、保助看法の考え方を変えるべきである。例えば産科のエキスパートなど、新しい制度を考えるべきである。

(反対論)

・  助産とは、従前から、「分娩の介助であり、すなわち妊婦に分娩兆候が現れてから、後産が完了して完全に分娩が終わるまでの間、産婦の身辺で分娩の世話をすること」とされている。
・  内診は、分娩進行状況を判断するための全体掌握の一つの手段であり、内診の行為を計測として単純に論じられるものではない。子宮口の開大度や児頭の下降度だけではなく、硬度・柔軟性、位置及び回旋、骨盤内の児頭の高さ、骨産道の形状等を判定して分娩進行に伴う危険の予見とその回避のための助産業務の一環であり、診療の補助行為ではない。これは、医師の指示下によるものではなく、また、看護師が代行できるものではない。
・  少子化で、安心安全な出産と質の高いケアが求められているなか、看護師に内診させるのは問題である。十分な教育を受けた助産師を養成するべきであり、助産師教育を充実させ、国が政策的に診療所の助産師を増やすことを積極的に行うことが必要である。

(慎重論)

・  従来の「内診」の中から仮に子宮口の開大度と児頭の下降度のみを切り離し、一定の訓練を受けた看護師に測定させ、医師に報告させる制度を設けた場合、
・  そもそも切り離せるのか、仮に切り離した場合に、それが「内診」と言えるのかどうか
・  子宮口の開大度と児頭の下降度以外の部分の情報が医師に伝わらない制度となるのではないか
・  内診するタイミングは機械的に決まるのか、看護師の知識と能力で産婦の状況を判断できるのか
・  患者の安全、医療の安全との関係でどういう意味を持つのか