高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)を読む

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)というタイトルにやられて購入。
タイトルもすごいが目次もすごいぞ。

webだと章の見出ししか取れないが、ホントは節ごとの見出しもなかなかすごい。


はじめに

第1章 高学歴ワーキングプアの生産工程
第2章 なぜか帳尻が合った学生数
第3章 なぜ博士はコンビニ店員になったのか
第4章 大学とそこで働くセンセの実態
第5章 どうする? ノラ博士
第6章 行くべきか、行かざるべきか、大学院
第7章 学校法人に期待すること
http://www.kobunsha.com/book/detail/03423.html

高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

これについて言及している日記をぱらぱら見たので、メモしてみる。

いつの時代であってもババを掴まされる人はいるわけです.ただそれをきちんと大学院に入る前に誰かから聞かされていたのか,ということが重要になってきますよね.入るときだけ「どうぞどうぞ」,出るときには「自分の意思で入ってきたんだから後は知らないよ」では酷すぎます.


僕は当然博士課程になんて進みませんよ.死ぬのは目にみえているし,そんなにお金ないしww.博士課程に行ったら人生白紙ですよ(誰がうまいこと言えとry).そういえば先輩は「今は博士課程に進んだら“末は博士か廃人か”って言われるそうです」と言ってました(誰がry.
2007-10-17 - 低温火傷 ■【読書(13)】『高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院』

リクルーティングする際にちゃんと重要事項の説明があったかという事は結構大事かなと思うものの、一方で博士取ろうとする以上、自分の位置づけについて多観点から客観視出来てないといかんのだろうなあとも思う。
現世的な視点から見た研究の価値、博士号、社会制度と自分の人生のかねあい、自分の人生の持続可能度合いなどについて考えないと、金取ってこれないし自分の人並みの生活というものが出来なかったりするわけで、象牙の塔に籠もって理学追求していては生きていけないと思うのよね。


そうは言っても、権力者(きょーじゅ)が甘言を弄して若者をリクルーティングするのも問題があるんで、
まあ適度な兼ね合いが必要なんですかね。上は正直に事実を告げるべきだし、下は甘言に弄されない精神力が必要、と。


 一方で、ところどころでは博士課程の院生や博士号取得者に向けた箇所も。著者は、博士の院生に、「アカデミックポストだけを志望するのはやめるべき」って言ってて。で、「博士課程に行ったことで、あんたらにはこんなスキルが付いてるのよ」とも。「それはその通り」と思って読んでたけど、「で、それ以外を志望するとして、具体的には何しよう」てなると、分かんなくなってしまった。就職について調べたことがあまりないという俺の弱さがモロに出てしまう。



 あと、大学側に向けた話も。学校運営には、経済的基盤と教育的基盤が必要とされているけど。著者はそれだけじゃなくて「精神的基盤」も必要だろうと。学校創立者の意志には備わっていたはずの、利他的精神(この場合の「他」は、苦しい状況にある学生ってことか)を発揮してやっていこうということ。ここも「それはまあ、そうかも」と思いつつ、「精神か…」という思いも若干。
■[雑記][本]『高学歴ワーキングプア』と関連する記事

ネットワーク系、情報系、工学系だと割と企業との敷居が低いこともあって、
この辺ではあんま悩まないんだけど、理学系の人とか大変だろーなと思う。
当方の専門分野では、企業人も学会にわらわら来るし、発表している。
セミナーなどにネタ拾いに行くとメーカの人のプレゼン等からヒントをもらったりするので、
巡り合わせによってはメーカに転職してもいいかなあと言う気がする。


現在の大学があんまり利他の精神に律されているわけではなくて、
個人主義というか、個人主義にも到らない疎な関係に支配されてるのは問題だよなあ。
お互いに研鑽するという雰囲気を形成したいと思いつつもそこまでパワー無いのでうまく演出できない。

 所属組織の利害には反することを承知の上で、私は、研究者になりたいという学生には、大学や独立行政法人の研究所に関する限り、当分の間はその見込みがほとんど無いことを正直に告げている。

給料の上では、修士と同じ扱いの会社もあったりするが、それでもまともな生活をすることができるだろう。
ポスドクは、その先がほとんど無いから、人生を棒に振る覚悟があるか、働かなくても食べていける収入源を確保している人でない限り薦めない。
この間も若い人に「若い間は薄給で任期付きで仕事をしながらチャンスを待つという気分でいることができても、その状態では、結婚はまず無理(収入が不安定な上に勤務地が短期で変わる可能性あり)、社会保障からもはじき出される可能性が高いし、数年して同級生に妻子が居てマイホームでも持とうかという状態を横目で見ながら、それでも研究に打ち込む貧乏暮らし人生に自分が満足していられるかをよく考えてから進学を決めるように」と言ったばっかりだったりする。
とにかく、博士取得後任期制でないポストを得たのが何割かを見ろ、任期付きになってる人達は全て失業者予備軍とカウントせよ、あと、就職していても人材派遣会社に就職した人は別扱いにすべきで、そうやって出した失業率を見て、それでもあなたはその道を選ぶか?というのが、これから進路を決めていく若い人に真面目に考えて欲しいことである。
博士課程に進学する前に読むべき本 :: 事象の地平線::---Event Horizon---

apj先生の書いた記事もなかなか興味深い。

大学にいる博士課程の人ってあんま意識してないけど、ガクシンなりPDなりは絶対金額も安いし、社会保障からも見捨てられているし、一般的には最貧民レベルの収入でしかない。
ふつーに学部卒で地道に働いていると卒業後5-6年たつとかなりの年収になっているわけで、そこと比べると非常に虚しいよなあ。
現世的な幸せを捨てて研究あるいは大学界隈の仕事をこなして楽しいかというのが重要ではある。
何にせよ年取ると色々キツくなるので、その辺に対する覚悟は必要と。
この辺の知識を収集することを「雑多な豆知識集めてどうするのか」と批判されたことがあるが、残酷な現実を集めて心構えしておくのは大事だ。自分が悲惨な目にあったときに心構えが出来る、と思う。現実を知って想像力を鍛えておかないと現実に負けちゃうぜ。

こちらのサイトのコメント欄で六月五月さんという方がアメリカのデータを紹介されている。
2003年までの25年間における博士学位取得状況だ。
これによると、2003年時点で、全分野を平均した博士号取得年齢は33.3歳で、学部卒業後博士号取得までの平均所用年数は10.1年。
理科系でも博士取得は平均30歳を超えている。
歴史学の属するHumanitiesを見ると、それぞれ34.6歳、11.3年だ。
なんと文科省アメリカの倍以上のスピードで博士を取れと言ってることになる。
桂堂徒然 博士号取得率についてもうちょっとだけ考えてみる

このTime to Degree of U.S. Research Doctorate Recipients というグラフ興味深いなあ。

  • 博士号取得の平均年齢33歳
  • 学部卒業後平均 10年で博士号を取得

と。

日本は学部卒業後 5年で取らせようとしてるので、学位の品質という競争を鑑みるにどーなのかなあという気はするな。
経済的な支援無くして単純に審査を厳しくすると屍の山が築かれた上に「金持ちしか学位取れない」になっちゃうんで、ちゃんと博士の現実を踏まえて制度改定するなり制度改定しないなりして欲しい。

学籍が無くなると奨学金の返済が始まるし、クレジットカードも作れなくなるでしょう。図書館の利用も不便になり、私のように自宅から遠距離で通っていた人間は、学生定期が使えなくなるなど(2倍以上になってぶったまげた)、研究環境も悪化します。そうするとますます論文が書きにくくなって、ポストから遠ざかってしまう。だったら学費払っても留年する方がトクなのだ。
桂堂徒然 文系の博士は難しい?

文系だと図書館使えないのはシリアスだろうなあと想像するけど、理系だとどーじゃろ。
IEEE, ACM, Google Scholar, CiteSeerあたりを駆使すると結構文献が集まるけれども、
前二者を金で買っても年2万円くらいだから、まあ何とかなるか。

クレカに代表される金融的な与信レベルはサイテーになるので、これも結構困るなあ。
今のところ某クレカの利用実績を積んで与信が消えないようにしているけれども、
無くなると色々不便だろうなあと思う。
ということで、某日興コーディアルの Visaデビットもゲットしたぜ。
これで将来野良になっても安心。


自分が学位取れないで野良になったらドウシヨと思うと色々現実的には困るんですけども、
まあ地道に飢え死にしないように仕込んでいくしかないよなーと思う所存です。